クスノキ 
Cinnamomum camphora
(クスノキ科)

 正門を入ると左右の前方に美しい樹形の大きな木があります。クスノキです。国内では関東以西に分布する常緑の高木です。防虫剤の樟脳を含み耐久性があるので、古くから建築、家具、仏像などの材料として珍重されてきました。 クスノキ科には良い香りを持つものが多く、“Cinnamomum”の属名が示すように、シナモン(ニッケイ)も同じ仲間の植物です。

 
 


  樹木の葉にも寿命があります。イチョウやカエデのように数ヶ月のものもあれば、マツやスギのように数年のものもあります。葉の寿命が1年未満であれば落葉樹、1年以上であれば常緑樹ということになります。スノキの葉の寿命は1年と10日あまり。かろうじて常緑樹の仲間入りです。昨年の4月に生まれた葉は、今年の新しい葉にせかされるように4月中旬から5月上旬の間にすっかり落ちてしまうのです。クスノキは春に一斉に落葉する木ということになります。また、この時期、真っ赤に紅葉する葉を見つけることもできます。落葉後、すっきりしたクスノキは新葉の緑に包まれます。根元の方まで光が差し込んできます。
  “新しい葉に世代を譲る”ところから名付けられたユズリハという植物の葉も、クスノキと同じような寿命を持っています。

  新しい葉がすっかりのびた5月から6月にかけて、クスノキはクリーム色の小さな花を咲かせます。ミツバチが蜜を求めて集まってきます。受粉を終えた花は緑色の小さな実を結び、夏の間に7、8 mmの大きさに生長します。秋には黒く熟し、今度はヒヨドリやムクドリの大切な餌として利用されます。

 クスノキの葉の、3つの葉脈が集まるあたりをじっくり見ると、葉脈の又の部分に小さなふくらみがあることに気づきます。“ダニ部屋”と言われるものです。
  カミソリで薄く切って見てみることにしました。

  確かに、“ダニ部屋”には10匹ほどの小さなダニがいました。フシダニという名前のダニです。樟脳という防虫成分を含んだ葉の中に、なぜダニがすんでいるのでしょうか?寄生しているのか、共生しているのか、いろいろな説があって、まだよく確かめられていないようです。

 
防虫成分を苦にしない生き物を、もう一種みつけました。軟らかい葉を食べて大きくなった幼虫が、鮮やかな緑色の“さなぎ”になりました。葉の裏に命綱の糸でぶら下がっています。アオスジアゲハです。構内では高いところを猛スピードで飛んでいるのをよく見かけます。キバナコスモスにとまっているところを、何とか写真に納めることができました。